NSX ATオーバーホール

こんにちは!

今日はNSXのATミッションOHに関する話です。

こちらもNSX担当者の記事から転載してます。

先日
AT交換を行ったNSXから降ろしたATを分解してみました。

症状は冷間時 エンジン始動してDレンジに入れても滑りが多く動き出しが緩慢で
暖機が進むと共に普通に走るようになるけれど3速にシフトアップしたとき また滑る。
と言う状態

KSPに入庫して来たとき近所を試乗してみるとなるほど3速で滑りを感じる。

このNSXは中古のATに交換して対処してしまいましたが

今後ATの修理需要は確実に増えるであろうしトラブルが出ている個体こそ
内部で何が起きているのか検証しておきたい。

と、思ってこのATを徹底OHしてみることにしました。

いままでも
ファイナル変更のためATを分解しギアやクラッチの交換は行った事が多々あるんですが
油圧制御しているバルブボディやオイルポンプなどには手を出していなかったんです。

クラッチの滑りだけならバルブボディを分解しなくても良いんだけどやはり
内部の油圧経路の汚れを洗浄したいし最深部にあるオイルポンプから音が出ている個体も有って
これを修理するにはフル分解が避けて通れなかったので。

で、ドナーとなるATを分解開始する。いつものようにケースを開けてギア&クラッチが組まれた3軸を抜いて各ポジションのクラッチをチェック。

NSXのATは各ギアポジションに対して油圧クラッチを持っているわけですが
街乗り使用では3速の負担が大きいようで今回のATも3速のクラッチがボロボロで
数枚のディスク板はツルツルに摩耗している。

ワイヤースロットルなNSXの時代では変速時アクセルを踏んでいる限りエンジンパワーは出たままでそれを油圧の半クラッチで繋いでいくわけなのでどうしたって変速時にクラッチは摩耗します。

そして、摩耗によって出たディスクの粉はATFに溶け出すわけでこれがATFを汚すと同時に
オイルポンプのストレーナーを目詰まりさせるわけで

すると当然油圧が上がらないのでクラッチの圧着力が上がらずクラッチの滑りがさらに進行する悪循環になるわけだ。

ストレーナーは目の細かい金網だけど今回のATでもストレーナーは著しい目詰まりでした。
おまけに溶け出した摩耗分でストレーナーは真っ黒。

これらの洗浄はいつもATファイナル変更でも行っているわけですが今回はさらに深部へ手を入れるためバルブボディを分解していく。

バルブボディは油圧の通る迷路のような部品で3階建て構造になっていて分解するとバネやボールがボロボロ出てくるので慎重に分解していく。

最深部でやっとオイルポンプギアとご対面。
この2個のギアのペアがエンジンに繋がれたトルクコンバーターで回されてATFに油圧をかけて
クラッチなどを動作させる原動力となるわけだ。

油圧経路をみるとやはり、ストレーナーをくぐり抜けた摩耗分で黒ずんでいるところがあるので
今回はこれらを全て洗浄して消耗部品を交換し4.4ファイナルギアを組んでリビルトATを仕立ててみようと思います。

誰のNSXに載せるかは決めていないんだけどATファイナルもよっち君とモンキーさんからの年越し依頼が残っているのでどちらかに載せようか。

こういう データ不足な初のチャレンジって思わぬ人災によるトラブルがあり得るんだよね。
もし、組み立てミスってやり直しになっても最終的には快調な状態にするので笑って許してくれる人が良いなぁ。